「私は、型枠大工としての技能を磨くために型枠施工技能士、それも1級まで取ったんですよ。どうして高所作業や穴掘りするための許可しか取れないんですか!?」
こうおっしゃったのは、当事務所に大工工事業の建設業許可の申請を依頼してこられた個人事業主の型枠大工Aさんです。
国家資格等で建設業許可を取得する場合の業種別の資格者要件のことは、建設業法施行規則第7条の3に書いてあります。
そこで大工工事業の資格要件を見てみると、職業能力開発促進法の資格(技能士)で専任技術者になることができる資格として挙がっているのは、1級及び2級の「建築大工」(建築大工技能士)であり、片や「型枠施工」(型枠施工技能士)はとび・土工工事業の専任技術者になることができる者として挙がっています。
また、各業種の建設工事において施工することができる工事の内容は建設業許可事務ガイドライン等で確認することができますが、これによると型枠工事は大工工事に区分されていて、とび・土工・コンクリート工事の方には入っていません。
これでは、型枠施工技能士の資格で建設業許可(とび・土工工事業)を取得できたとしても、一定規模以上の型枠工事は施工することができないということになります。
冒頭は、このことに対するAさんの反論の弁でした。
では、1級型枠施工技能士のAさんが建設業許可(とび・土工工事業)を取っても、できるのは足場の組立てや土砂の掘削だけで型枠工事はできないのでしょうか。
そんなことはありません。とび・土工工事業の許可であっても型枠工事を施工することはできます。(できなければ、どう考えてもおかしいですよね)
とび・土工工事業の内容には、足場の組立てや土砂の掘削等以外に「コンクリートにより工作物を築造する工事」「その他基礎的ないしは準備的工事」というものがあり、これを根拠にとび・土工工事業で型枠工事を施工することが通常認められています。
そのことをAさんにご説明してご納得いただきましたが、どうしても大工工事業にこだわるとおっしゃるのであれば、実務経験を証明して申請しなければならないところでした。
ちなみに、今年4月1日から施行される改正建設業法施行規則においては、そのような業界からの要望等による見直しの結果、型枠施工技能士が一般建設業の大工工事業の営業所専任技術者の要件に追加されることになりました。
型枠施工技能士という名称で、しかも建設業で型枠大工という職名が定着している以上、やはり型枠施工技能士も大工工事業の専任技術者の資格要件の一つであってしかるべきでしょう。
最後に、これは余談ですが、とび・土工工事業のというのは非常に幅が広く、足場の組立てや掘削工事以外にも鉄骨建方やくい打ち工事、コンクリート打設などもあります。
多少気になるのは、型枠施工技能士の資格で法令上これらの工事も施工してよいことになっているということですが、そこは私の独り言として締めくくらせていただきます。