経管・専技の遠方勤務について

公開日:2018年04月18日 / 最終更新日:2018年04月18日

経管・専技が事務所を離れて遠くに行くのはNGです

経営業務の管理責任者と専任技術者には「常勤性」や「専任性」、すなわち許可を受けた営業所に常時勤務していることが求められていますので、これらの者が自ら営業所から遠く離れた県外の現場に赴任するなどして、長期にわたり営業所を留守にするようなことは、原則としてNGです。


以下は、数年前当事務所に新規許可申請の相談をしてこられた電気工事業を営む福岡県内のある個人事業主(仮名A氏)の事例を基にお話しします。


当時A氏は、開業したばかりだったのですが、建設業許可を受けていた前勤務先で営業所長(いわゆる「令3条の使用人」)の経験が5年以上あり、また第1種電気工事士の資格をお持ちで、経営業務の管理責任者(経管)と専任技術者(専技)の要件を満たしているほか、その他の許可基準も十分クリアでき、許可は問題なく取得でそうな状況でした。


ところが、A氏は大手電気工事会社の下請業者として東京のある大規模マンション新築工事の現場に赴任中で、普段は事務所を留守にして、福岡に戻ってくるのは数カ月に一度であり、この状態があと2年続くとのことで、これで経管・専技に必要な常勤・専任の要件を欠くことになりました。


A氏の許可申請にあたっては、「経管の経験は前勤務先在籍中の期間」そして「新設未決算で工事経歴なし」であることから、申請書類や添付書類の中からはA氏が常勤性等を欠いている証拠となるものは出てきません。

ですから、余計なこと(?)さえ言わなければ、多分許可は下りるのですが、ただ許可後発覚すれば「経管、専技の基準を満たしていない」として許可取消処分(許可業者名簿から削除される手続き上の取消し)を受けるであろうということは容易に予想できました。


そこでA氏には、許可申請は2年後福岡に常勤できるようになってから行うことを進言したのですが、結局A氏はこれを聞き入れず、他の行政書士に依頼し許可を取得しました。


建設業許可を受けると、毎事業年度終了後に「決算変更届」というものを提出しなければなりませんが、その中には当該事業年度の「工事経歴書」もあります。

A氏の場合、現在東京で施工中の工事以外に仕事はなかったので、決算変更届の提出があれば、その時点でA氏が普段地元にいないことが明らかになり、お気の毒ですが、当該処分は避けられないと思います。


A氏の依頼を受けた行政書士が、その点をどう考えているのか知る由もありませんが、現在のところは許可はまだ維持されているようです。

ただし、既に2期分の決算を終えているにもかかわらず、決算変更届はまだ一度も提出されていません。


更新時期が到来すれば、必ず5期分の決算変更届の提出が必要になりますが、そんな段階で発覚すれば、不正の手段で許可を受けたことを隠匿していたとして、手続き上の取消処分より重い「不利益処分としての許可取消処分」(以後5年間許可申請ができない)の対象にもなりかねないのではと、老婆心ながら、未だに懸念しております。


A氏ほどではないにせよ、普段から経管、専技が遠隔地の現場に出ていることが常態化している許可業者は少なくないと思いますが、心当たりのある皆様は、この点心しておいてください。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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