個人事業主の経営経験が否認された事例

公開日:2019年10月31日 / 最終更新:2020年10月09日

個人事業主が経営経験期間中に会社を設立していた

一級建築士の資格を持つAさん(44歳・男性)は、地元大手ゼネコンを退社後、個人事業で建築工事業を営み決算を5期終えましたが、個人事業開始2年後に自らを代表取締役(他に役員はなし)とする株式会社の設立登記を行いました。

 

Aさんがこの会社(以下「B社」といいます)を設立したのは、自己が所有する賃貸物件の税金対策のためでしたが、将来建設業許可を取得する際に現在の個人事業を法人化することを考えていたので、B社の定款の目的には『建築工事の設計施工』という文言を入れました。

 

そんなAさんが満を持し、晴れて建設業許可の新規申請をしたという事例です。

個人事業開始から5年!待ちに待った建設業許可申請

個人事業を開始して丸5年を経過したのを機にAさんは、B社の社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きを行い、さっそくB社名義での新規許可申請を行いました。

 

5期目の確定申告を終え、事業を開始してからも丸5年ですから、経営業務の管理責任者(経管)の要件はクリアしています。専任技術者(専技)の要件も、一級建築士ですからまったく問題ありません。

 

申請名義のB社は、赤字決算により資本金を割り込んだ状態になっていますが、Aさん自身の資力により500万円以上の資金調達能力は十分にあります。

また、当然のことながらAさんは欠格要件に該当するような人ではありません。

建設業許可を受ける上でのマイナス要素は何一つないと思われました。

まさかの申請不受理!

ところが、あろうことか申請窓口の土木事務所建築指導課はB社名義でのAさんの申請を受け付けなかったのです。

 

建設業法上の許可基準は十分満たしているはずなのに、なぜこの申請は受け付けられなかったのでしょうか。

 

詳しくは後述しますが、それはAさんの個人事業主としての常勤性が問題になったからです。→常勤性とは

Aさんの許可申請が受け付けられなかった理由とは

Aさんの許可申請が受け付けられなかった理由は、B社が設立しAさんが代表取締役に就任した時点で、Aさんは「個人事業主としての常勤性を失ったので、B社設立後の2年間を個人事業の経営経験と認めることができない。代わりに定款上建設業を営むB社代表取締役としての経験が認められるかと言えば、今日までB社は建設工事を請け負っておらず、当該経験はないといわざるをえない。よってAさんの建設業の経営経験は個人事業開始後の3年間だけであり、経管の要件を満たさず、許可基準に合致しない。」と判断されたからです。

 

要するに、AさんはB社の代表取締役として登記されたことにより個人事業主の地位を失い、以後はB社の代表取締役の方が本業で個人事業の方は副業的なものとなったので、個人事業主の経験として丸々5年間認めることはできず、許可要件も満たさないということです。

なぜ代表取締役との兼務期間が認められないのか

これに対しAさんは、自分の確定申告書やB社の決算報告書などを基に「B社は節税目的で設立したもので、その代表取締役の勤務の実態は非常勤であり、本業はあくまで個人で営む建設業の方である。現にB社からは役員報酬も取っておらず、売上高も圧倒的に個人事業の方が多い。以上の理由から、会社設立後も個人事業の方が常勤と認められてしかるべき」と反論しました。

 

多分皆様は、Aさんがこう主張するのはもっともだと思われるでしょう。

私もAさんの主張は間違っていないと思います。そもそも一人の人が複数の会社の代表取締役を兼務していることなど、世間では珍しいことではありません。

しかし、悲しいかな、建設行政においてはこのような理屈が通らないのです。

 

言うまでもいなく代表取締役とは、会社を代表する権限を有する当該会社の最高責任者ですが、建設行政は、かような職責の代表取締役について「非常勤はありえない」(ただし複数員数が選任されている場合を除く)という考え方に立っているからです。

 

したがって、許可申請者の代表取締役が他社でも代表取締役を務めている場合、その者が経管になることを認めていません。

本件のように許可申請者の個人事業主が経営経験期間中に他社の代表取締役を兼務していれば、当該経験を個人事業の経営経験として認めないという取扱いをしているので、Aさんの場合もこれに倣ったというわけです。

まとめ

個人事業主が経営経験を積み上げながら、将来的に法人化して建設業許可を取得しようとして、何も深く考えず「とりあえず先に法人だけ設立していた」ことが仇になったという事例でした。

 

経営業務の管理責任者の要件は、徐々に緩和されつつあるので、将来的には、就任時の常勤性さえ証明できれば、上記のようなことがなくなる日が来るかもしれません。

 

しかし、専任技術者の実務経験については、引き続き常勤性(正確には専任性といいます)が要求されますので、上記と同様なケースで、個人事業時代に積んだ実務経験が認められなくなり専任技術者の要件をクリアできず、許可取得がかなわないということが依然として起こりうるということに気を付けてください。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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