組織再編・相続と建設業許可の承継

公開日:2021年02月03日 / 最終更新日:2021年02月20日

組織再編・相続での建設業許可の承継が可能となる

令和2年10月1日施行の改正建設業法により、新たに『建設業許可の承継(事業譲渡・合併・分割)、相続に係る事前認可制度』が創設されました。

これまで建設業者が組織再編(譲渡・合併・分割等)を行う場合、譲受会社、合併又は分割後の存続会社は、譲渡会社、合併又は分割後の消滅会社の建設業許可を承継することができず、承継後新たに許可を取り直すことが必要でした。

今回の改正により、このようなケースでの許可の承継が可能となり、新しい許可が下りるまでの空白期間が生じることなく、円滑な事業承継ができるようになりました。(個人の許可の承継(相続)についても同様の規定が設けられました)

建設業許可承継のスキーム

【改正前】

吸収合併等において、消滅会社である建設業者の事業を承継する場合、当社が有する建設業許可と同じ業種の許可を新たに申請しなければならず、このため新規許可を習得するまで当該建設業を営むことができない空白期間が生じるという不利益が生じていた。

【改正後】

吸収合併等を予定する場合、あらかじめ許可行政庁の認可を受けることで、かような空白期間をなくし、吸収合併等による事業承継の効力発生日から、消滅会社である建設業者が有する許可の業種の建設業の営業をできるようにする。

個人の相続についても、被相続人の死亡後30日以内に申請を行い認可を受けたときは、同様の取扱いとする。

建設業許可の承継等の概要と手続きの流れ

事業譲渡等(譲渡・合併・分割)による許可の承継

①事前に許可行政庁へ事業譲渡等(譲渡・合併・分割)の認可を申請

②許可行政庁における申請内容の審査

③事業譲渡等の認可の通知(不認可の場合はその旨通知)

④事業譲渡等の効力発生日に許可を承継

*許可の有効期間は、承継前に有していた許可も含め、承継の日から5年間

*承継人が建設業者でない場合、新設型の合併で事業譲渡等の日に新設会社に承継する場合等も上記の流れで承継可能

相続による許可の承継

①被相続人(建設業者)の死亡後30日以内に許可行政庁へ相続の認可を申請

②許可行政庁における申請内容の審査

③相続の認可の通知(不認可の場合はその旨通知)

④相続開始日に遡り許可を承継

*所定期間内に認可の申請ができなければ、従来の手続き(被相続人の廃業届出と相続人の新規許可申請の同時提出)を行う

*認可の申請をした場合、申請に対する処分があるまでは、相続人は被相続人の許可を受けたものとして取り扱われる

*許可の有効期間は、承継前に有していた許可も含め、承継の日から5年間

承継認可の対象となる建設業について

承継又は相続の認可の対象となる許可は、承継元(被承継人・被相続人)が受けているすべての業種についてです。(一部業種のみの承継等は認められません)

同一業種でも、一般・特定の区分が同じなら承継等は可ですが、承継(相続)人が同一業種の一般建設業許可(特定建設業許可)を受けている場合に、被承継(被相続)人の当該同一業種の特定建設業許可(一般建設業許可)を受け継ぐことはできません。(ただし、承継(被相続)人が当該一般(特定)許可を事前に廃業するなら承継可)

承継人又は相続人の許可基準について

承継(相続)人についても、建設業法第7条(特定建設業の場合は同法第15条)等に規定する許可基準が求められます。

つまり承継(相続)人自身も、「経営業務の管理責任者」「専任技術者」「財産的基礎又は金銭的信用」「欠格要件に該当しないこと」等の要件をすべて満たす者でなければならないということです。

主な必要書類(法定様式を除く)

事業譲渡等(譲渡・合併・分割)の認可

〇譲渡及び譲受け又は合併若しくは分割に関する契約書の写し等

〇合併(分割)の方法及び条件が記載された書類

 

*これら以外に他の書類を求められる場合もあります。

相続の認可

〇申請者と被相続人の続柄を証する書類

〇被相続人が営業していた建設業を申請者が継続し営業することの相続人同意書

 

*これら以外に他の書類を求められる場合もあります。

認可の申請先及び申請手数料について

承継元、承継先「両者とも福岡県知許可業者」であれば「福岡県知事」、承継先が福岡県知事業者でも「承継元が大臣許可業者若しくは他都道府県許可業者」であれば「国土交通大臣(九州地方整備局)」に申請します。

なお、認可申請について申請手数料は不要です。

事業承継後の許可番号及び有効期間の取扱い

承継(相続)人が事業承継(相続)後に使用する許可番号は、被承継(被相続)人のものを引き続き使用することができますが、承継(相続)人が建設業許可業者であれば、承継(相続)人自身の許可番号を選択することもできます。

有効期間については、当該承継の日(事業譲渡等効力発生日・相続開始日)から起算して5年間となり、これは承継(相続)した許可だけでなく、承継(相続)人が元々有していた許可も同様です。

建設業者の地位の承継

認可を受けることにより、被承継(被相続)人の建設業者としての地位を承継しますが、「建設業者としての地位を承継する」とは、建設業法第3条の規定による建設業の許可(更新を含む)を受けたことによって発生する権利と義務の総体をいい、承継(相続)人は被承継(被相続)人と同じ地位に立つこととなります。このため、承継(相続)人は被承継(被相続)人の受けた法に基づく監督処分や経営事項審査の結果についても、当然に承継することになります。

一方、法第45条から第55条までに規定される罰則については、建設業者の立場にかかわらず、罰則の構成要件を満たす違反行為を行った法人(個人)に対して刑罰を科すものであるため、承継(相続)人に承継されることはありません。

その他

新制度であることから、審査に時間がかかると思われますので、あらかじめ余裕をもって準備し、許可行政庁と事前協議する必要があります。

また、今回の改正にかかわらず、従来型の手続き(被承継(被相続)人の廃業届出と承継(相続)人の新規申請の同時提出)による事業承継等も引き続き可能なので、許可を急ぐのであれば、従来型の手続きを利用することもできます。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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