建設業者の役員が犯罪を犯したときは

公開日:2018年04月22日 / 最終更新日:2018年07月30日

建設業者の役員等に不祥事があったときの危機管理

建設業許可を取得している会社が、ある日突然、建設業法第8条に規定する「欠格要件」に該当し、許可取消処分の憂き目を見ることも、稀なことではありますが、ありえないことではありません。


このような取消処分を受ける原因となるものに、たとえば役員等が犯罪を犯して有罪判決が下されるなどの不祥事があります。

処分内容

建設業法第29条第1項に基づく許可の取消し

処分事由

株式会社A建設の取締役は、傷害罪により平成○年○月○日に福岡地
方裁判所久留米支部から懲役1年(執行猶予5年)の判決を受け、翌
○月○日にその刑が確定しており、建設業法第8条7号の欠格要件に
該当する。このことは、同法第29条第1項第2号に該当する。

こういう危機的状況を事前に回避するためにも、日頃から内部統制やリスク管理に取り組むべきなのですが、不幸にして起きてしまったときは、その影響を最小限に食い止め、いち早く危機状態からの脱出・回復を図るよう正しい行動を取らなければなりません。

ここで対象となる役員等とは

業務を執行する社員(持分会社の業務執行社員)

取締役(株式会社又は有限会社の取締役)

執行役(委員会設置会社の執行役)

以上に準ずる者(法人格ある各種の組合等の理事等)

相談役、顧問

その他名称を問わず、上記役員と同等以上の支配力を有すると認めら
 れる者(総株主の議決権の5%以上を有する個人株主又は出資者等)

*執行役員、監査役、会計参与、監事、事務局長等は該当しない

また、対象となる不祥事や刑罰とは

破産

禁固以上の刑

建設業法の規定による罰金刑

建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法、景観法、労働基準法、
 職業安定法、労働者派遣法の規定で政令で定めるものによる罰金刑

暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者である

刑法第204条(傷害罪)206条(現場助勢罪)208条(暴行罪)208
 条の3(凶器準備集合罪)222条(脅迫罪)247条(背任罪)の規定
 による罰金刑

暴力行為等処罰に関する法律の規定による罰金刑

建設業法第11条第5号には、欠格要件に至ったときは、2週間以内に書面(法定様式)で許可行政庁に届出なければならないことが定められています。

このようなときは下手に隠し立てするのが一番いけません。まして最後まで隠し通そうなどというのはもってのほかです。


このような事態になった以上、もはや許可取消しは免れないのですから、速やかに届出て「違反状態を積極的に改めるべく教えを乞う」という真摯かつ謙虚な態度を示し、許可失効後の社内外の対応まで含めて指導を仰ぐようにして、それに基づき粛々と問題を処理していくのがベストです。

その方が行政庁も親身に対応してくれますし、事後処理もスムーズに運びます。


よくやってしまいがちなのが、自分たちだけで極秘に善後策を講じようとして届出を遅滞させてしまい、逆に事態を察知した行政庁の方から出頭を求められるようなことで、これが「悪質な隠蔽工作」とでもみなされたら、単なる「行政手続上の取消処分」では済まされず、「不利益処分としての取消処分」(以後5年間許可申請できない)に処せられることにもなりかねません。


建設業許可の取消処分とは非常に重たいものですが、虚偽申請などの不利益処分によるものでない限り、再び許可要件を満たすことにより再度の許可申請が可能になり、行政庁もそれを拒否する理由はないのです。

一日も早く原因となった役員等を排除するなどして、まずは早期の立て直しを図り、再度の許可申請ができるようになることが大事です。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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