知事・大臣の許可区分の大きな誤解

公開日:2019年02月04日 / 最終更新日:2020年08月27日

営業所を複数都道府県に置けば大臣許可が原則です

建設業許可の区分の一つに『都道府県知事許可』と『国土交通大臣許可』とがありますが、1の都道府県(たとえば福岡県なら福岡県)のみに営業所を設ける場合に知事許可、2以上の都道府県(福岡県以外に大分県、熊本県など)に営業所を設ける場合に大臣許可が必要になります。

 

ただし、工事の施工場所に制限はなく、知事、大臣どちらであっても全国どこでも施工可能であり、福岡県知事許可でも、営業所のない大分、熊本等の県外で工事をすることはできます。

 

ここでいう『営業所』とは「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」(請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等、請負契約の締結に係る行為を行う実体的な事務所)であり、本店であれば経営業務の管理責任者、支店であれば建設業法施行令第3条に規定する使用人(令3条使用人:請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等に係る権限を与えられた当該支店の代表者)、そして本支店とも専任技術者が置かれることが必要です。

 

さて、ここからが本題ですが、前述の「知事、大臣とも全国各地で工事可能」ということが拡大解釈され「複数の都道府県に拠点を置き建設業を営業する場合でも、本店又は支店のいずれかが所在する1の都道府県の知事許可を取得し、他の営業所は建設業の営業に関与しない形で営業を行う」ケースが横行していますが、厳密に言えばそれは違法行為です。

 

あくまで知事許可・大臣許可の区分は営業所の所在形態によるものであり、複数の都道府県で建設業を営業するのであれば、大臣許可の建設業許可を受けるというのが原則です。

ただ実際問題すべての営業所に専任技術者となるべき人材を置くことが難しいなどの事情により、便宜的にそういう名目で知事許可を受けている建設業者が少なくないことも事実なのですが、根本のところをはき違えてはいけません。

 

また、建設行政の事務取扱では、営業所の範囲について「許可を受けていない事務所が常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合でも、他の営業所に対し、請負契約に関する指導監督を行うなど、建設業の営業に実質的に関与するものである場合は建設業法上の営業所に該当する」とされており、これを持ちだすまでもなく、一般的に支店は本店の統括管理下に置かれるものなので、本店ではない1の都道府県の支店のみを建設業法上の営業所として知事許可の申請をする場合は、特にそのあたりが厳格に問われるものです。

 

大臣許可を受けるべきであるにかかわらず、知事許可で営業することは俗に「大臣飛ばし」といわれ、これが発覚し、悪質と判断されれば「許可の取消し」(建設業法第29条第5号)とともに「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金(併科あり)」(同法第47条第1項第3号)の対象となる違法行為です。

 

違法の認識がなくとも現にこのような営業形態であれば、是正を検討すべきですし、これから新規申請予定で都道府県をまたぐ営業をお考えなら、誤った解釈、都合のいい解釈で建設業法違反に問われることのないよう気を付けてください。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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