建設業法改正2020/経営業務管理責任者

公開日:2020年06月14日 / 最終更新日:2020年09月09日

10月から経営業務管理責任者の基準がこう変わる!

国土交通省は、10月1日からの改正建設業法施行に向け、同法施行規則改正案をまとめた後、5月13日から6月12日までの間これをパブリックコメントに付し、8月28日に公布、これにより改正建設業法の施行が正式決定しました。

今回の改正により「経営業務管理責任者の基準の見直し」「事業承継制度(許可の承継)の創設」「施工体制台帳の記載事項追加、電子的取扱い」「監理技術者講習の有効期間の見直し」「経営事項審査に関する見直し(継続的能力向上に取り組む技術者・技能者の評価項目追加、建設業経理に関する状況の見直し)」「登録経理講習実施機関の創設」等の施策が行われるようになりますが、中でも一番注目を集めたのは、やはり経営業務管理責任者の件でしょう。

さて、経営業務管理責任者の基準は、一体どのように見直されたのでしょうか。

該当条文(建設業法第7条第1号)新旧対比

まずは、経営業務管理責任者の要件について、今回改正される建設業法の該当条文(第7条第1号)について、改正前(旧)と改正後(新)の比較します。

 

*改正後(新)の下線部分が変更箇所です。

改  正  前 ( 旧 )

(許可の基準)

第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。

一 法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。

イ 許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者

ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

改  正  後 ( 新 )

(許可の基準)

第七条 同 上

一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通令で定める基準に適合する者であること。

条文的にはかなりシンプルになりましたが、当初言われていたような「建設業の経営管理経験が不問とされる」といったようなことではありません。

 

事業者全体として適切な「経営管理責任体制」を有しているかどうかが判断されるようになり、その適切とされる体制について、従来の5年以上の建設業の経営管理経験を有する常勤役員が置かれていることのほか、当該会社において5年以上の財務管理、労務管理、業務運営のそれぞれに携わっている者を補佐役として配置することを条件に、経営業務管理責任者員に求める経験年数が緩和されるというものです。以下、その詳細ををご覧ください。

法改正後の経営業務管理責任者(経営管理責任体制)の基準とは

改正建設業法第7条第1号にある「建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するもの」について、国土交通省が省令(建設業法施行規則)で定める基準は、次の①及び②の要件を満たすことです。

①適正な経営能力を有すること

適正な経営能力を有するものとして、下記の(イ)又は(ロ)のいずれかの体制を有するものであること。

(イ)常勤役員等のうち一人が下記の(a1)、(a2)又は(a3)のいずれかに該当する者であること。

※常勤役員等

法人の場合は常勤の役員(株式会社・特例有限会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役、持分会社の業務執行社員、法人格のある各種組合等の理事等)、個人の場合は個人事業主又は登記された支配人(以下同じ)。

(a1) 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者

(a2) 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として5年以上経営業務を管理した経験を有する者

(a3) 建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者

【解説】

(a1)は現行制度とほぼ同じ基準です。改正点としては、経営経験のある業種でも、ない業種でも、一律5年以上となったことです。

(a2)、(a3)も現行制度からあったもので、前者は「執行役員等としての経営管理経験」、後者は「経営業務を補佐した経験」と言われていました。

経営業務の管理責任者に準ずる地位について

(ロ)常勤役員等のうち一人が下記の(b1)又は(b2)のいずれかに該当する者であって、かつ、当該常勤役員等を直接に補佐する者として、下記の(c1)、(c2)及び(c3)に該当する者をそれぞれ置くものであること。

(b1) 建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の建設業の役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位における経験を有する者

(b2) 建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験2年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者

(c1) 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者

(c2) 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者

(c3) 許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有する者

※(c1)、(c2)、(c3)は一人が複数の経験を兼ねることが可能

【解説】

(b1)は、建設業を営む会社の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの担当役員の経験が2年以上あり、なおかつ役員に次ぐ職制上の地位での業務経験まで含めて通算5年以上の経験があれば、経営業務管理責任者の要件を認めるということです(「業務運営」の意義が不明ですが、施工、営業、総務、経理等、建設業の業務を幅広く網羅するものと思われます)。

(b2)は、建設業を営む会社での役員経験が2年以上あることを条件に、建設業以外の他業種での役員経験も認めるという規定です。(通算5年以上)

そして、両方に共通するのは、経営業務管理責任者である当該役員を補佐する者として、(c1)財務管理、(C2)労務管理、(C3)業務運営のすべての業務について5年以上の経験を有する者を置かなければならないということで、補佐する者はこれらすべての業務の経験を有するのであれば、1名ですべてを兼ねていても構いません。

②適切な社会保険に加入していること

健康保険、厚生年金保険及び雇用保険に関し、全ての適用事業所又は適用事業について、適用事業所又は適用事業であることの届出を行った者であること。

【解説】

これは、社会保険加入が経営管理体制の基準の一つとして位置付られたというよりも、強制適用事業所である限り、すべての建設業者について社会保険加入の届出が建設業許可の必須条件となったと言うべきでしょう。

③経営管理責任体制の要件を満たしていることを示す書類

①及び②の要件を満たしていることを示す書類として、①に関し、使用人の証明書や会社の組織図等、②に関し、届出の内容を記載した書面や届出を行ったことを示す書類の提出を求めることとする。

 

①及び②の要件に関し、変更が生じた場合は、一部を除き、変更から二週間以内にその内容について届出をしなければならないこととする。

【解説】

①について、(a1)はほぼ現行通りの規定なので、引き続き「確定申告書の写し」「請負工事の契約書等の写し」「商業登記簿謄本」等が確認資料となると思われます。

(a2)、(a3)も同様にほぼ現行通りですが、例示のような「会社組織図」のほかにも「職務分掌規程」「取締役会議事録」「経営業務に関する決済文書」等々の提出が必要と思われます。

(b1)、(b2)は、(a1)の確認資料と(b2)で要求されるそれらの中のいずれかの組み合わせになると思われます。

②に関しては、従前から健康保険及び厚生年金保険、雇用保険に係る「領収証書等の写し」「納入証明書」等を提出していましたが、これらがそのまま踏襲されると思われます。

いずれにしても詳しくは、改正法施行時に発表される国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」や各地方整備局及び各都道府県の「建設業許可申請の手引き」等で明らかになることでしょう。

なお、①及び②に変更が生じた場合は、2週間以内に届出をすることとありますが、これは改正前とまったく変わるものではありません。

まとめ

今回の建設業法改正に係る規制改革実施計画の中には、当初「建設業経営管理の経験を代替する研修制度の創設」などの案もあり、5年ないし6年以上の建設業の経営管理経験の要件が撤廃されるのではとの期待もありましたが、残念ながら、そこまで大きく変わりませんでした。

<今後の経営業務の管理責任者に係る要件とは>

(a1) 業種に関係なく、5年以上の建設業の経営管理経験を有する者

(a2) 取締役会又は代表取締役から具体的な権限移譲を受け、執行役員等として5年以上の建設業の総合的な経営管理業務の経験を有する者

(a3) 経営業務の管理責任者に次ぐ役職で、建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について、6年以上従事した経験を有する者

(b1) 建設業の役員経験2年以上に加え、建設業の役員に次ぐ職制上の地位まで含めて5年以上の経験を有する者 ※

(b2) 建設業の役員経験2年以上のほか建設業以外の他業種の役員経験があり、それらを通算して5年以上の者 ※

 

※ 補佐役として、(c1)財務管理、(C2)労務管理、(C3)業務運営のすべての業務について5年以上の経験を有する者を置かなければならない。(補佐役はそれぞれ1名の必要はなく兼任でも可)

繰り返しになりますが、(a1)は改正前からの建設業の役員等としての経験で、許可を受けようとする建設業、許可を受けようとする建設業以外の建設業の区分に関係なく経験年数は5年以上となります。

 

(a2)、(a3)も従前から存在する制度で、それぞれ「執行役員等としての経営管理経験」、「経営業務を補佐した経験」と言いますが、前述のような全社的経営管理責任体制を証明する確認資料が要求されるところ、そこまで体制が確立された申請者はごく少数で、実際に認められるのもレアケースであり、今後もあまり有効な方法とはなりえないでしょう。

 

(b1)、(b2)は、建設業の役員経験が2年以上あることが前提となりますが、それぞれ建設業における役員に次ぐ職制上の地位の経験まで含めて通算5年以上、建設業以外の業種の役員等の経験まで含めて通算5年以上であれば経営業務の管理責任者の要件を認めるというもので、この点が多少変わったところです。

ただし、(b1)、(b2)いずれも、(c1)、(c2)、(C3)それぞれの業務に通じた補佐役を置くことが必要とありますが、中小零細事業者などがそのような人材をすべて配置することができるでしょうか。

 

また、これら補佐役は1名ですべてを兼任してもよいとのことですが、すべてを兼任できる各業務の5年以上の経験者といえば、これこそが総合的な経営業務管理の経験者であり、そのような人がいるなら、その人を経営業務管理責任者にすればいいだろうという話にもなりそうです。

 

とにもかくにも、要件緩和というには不十分な感を否めない内容でありますが、令和2(2020)年10月1日施行の改正建設業法に係る経営業務の管理責任者の新基準について解説させていただきました。

以上は、あくまで改正法施行前の現段階(記事執筆中の現在、国土交通省本省から各地方整備局あての建設業許可事務取扱指針である「建設業許可事務ガイドライン」の改訂に関するパブリックコメントの最中です)における私なりの検証に基づくものであり、施行後の実際の取扱いと若干の差異があるかもしれないことをあらかじめご承知おきください。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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