25年ぶり大改正!改正建設業法等成立

公開日:2019年06月06日 / 最終更新日:2020年10月11日

経営業務管理責任者に関する規制も合理化される!

経営業務の管理責任者の経験年数緩和、建設業者の社会保険強制加入、配置技術者の規制合理化等の施策が盛り込まれた改正建設業法等が、6月5日の参議院本会議で可決、成立しました。

 

今回の改正は、建設業の将来の担い手の確保が急務となる中「建設業における働き方改革の推進」「建設現場の生産性向上」「持続可能な事業環境の確保」の3つの観点から現行法を見直したもので、標記のように建設業許可の経営能力要件である『経営業務の管理責任者』が初めて見直されるなど、公共工事入札で経営事項審査(経審)を義務化した1994年以来25年ぶりの大改正です。

 

一部を除き2020年秋から施行されますが、主な改正内容は以下のとおりです。

建設業許可基準の見直し

経営業務管理責任者に関する規制を合理化

建設業の許可基準のうち、建設業経営に関し過去5年以上の経験者(経営業務の管理責任者)が役員にいないと許可が得られないとする現行の規制を見直し、今後は、事業者全体として適切な経営管理責任体制を有することを求めるように改めるとのことで、具体的には、国土交通省令で別途その基準が定められますが、現時点ではその内容ははっきりしていません。

 

この点多くの皆様の最大の関心事であろうかと思いますので、詳細が分かり次第当サイトでも取り上げるつもりです。改正建設業法2020/経営業務管理責任者

社会保険への加入を要件化

現場の処遇改善の意味も含め、社会保険の加入がいよいよ建設業許可基準の一つとして要求されるようになることが決まりました。

 

省令で定められる建設業許可基準の詳細に「社会保険への加入」が明文化されることにより、未加入企業に建設業の許可・更新を認めない仕組みが構築され、許可業者からの不良・不適格業者の排除が徹底されるようになります。

事前認可による建設業許可の承継

あらかじめ許可行政庁の認可を受けることにより、建設業の吸収合併や事業譲渡に際し、譲受人等が許可を受けた譲渡人等の地位を承継することや、個人建設業者が死亡したときに、相続人がその許可を承継することを可能にする制度が新たに創設されます。

 

吸収合併や事業譲渡、相続に伴う新規許可申請を不要とすることにより、審査や手続き等によって生じる許可の空白期間をなくすことが可能になります。

工事現場の技術者に関する規制の合理化

元請建設業者の監理技術者の専任義務の緩和

元請建設業者が配置する監理技術者に関し、これを補佐する「技士補」が専任配置されている場合は、当該監理技術者による複数現場の兼任が容認されます。

*「技士補」とは

2021年春より、現行の技術検定制度(一級・二級の土木、建築等の施工管理技士)が学科と実地を加味した第1次検定と第2次検定に再編成され、第1次の合格者に「技士補」という称号が付与されるようになります。

上記の監理技術者を補佐する技士補とは、一級の第1次検定に合格した二級施工管理技士有資格者が該当します。

下請建設業者の主任技術者の配置義務の合理化

下請建設業者が配置する主任技術者に関し、一次下請業者が一定能力(概ね1年以上の指導監督的な実務経験)を有する主任技術者を専任配置する場合は、二次以下の下請業者は主任技術者の配置を不要とすることができます。

その他の改正

上記以外にも、次のとおり、著しく短い工期での契約禁止等を柱とする建設業の働き方改革の推進、生産性向上、持続可能な事業環境の確保といった諸課題に対応するための規定新設や既存規定の合理化が行われたほか、

○請負契約書面の記載事項の追加(工事を施工しない日又は時間帯の定め等)

○著しく短い工期の禁止

○工期等に影響を及ぼす事象に関する注文者の情報提供義務

○下請代金の労務費相当部分についての現金払い配慮義務

○違反行為の通報等を理由とする不利益な取扱いの禁止

○建設工事業者の知識及び技術又は技能の向上についての努力義務

○復旧工事の円滑かつ迅速な実施を図るための建設業者団体の責務

○工期に関する基準の作成等(中央建設業審議会)

○建設業者の標識掲示義務の緩和(元請工事のみを対象とする)

○建設資材製造業者等に対する勧告及び命令等

同時に可決された改正入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)においては、「公共工事受注建設業者が著しく短い工期の下請契約を締結していると疑うに足りる事実があるときは、発注機関の長が許可行政庁にその事実を通知する」ことや「公共工事の施工に必要な工期の確保及び公共工事の施工の時期の平準化を図るための方策に関する事項を、公共工事の入札及び契約の適正化に係る指針の記載事項として追加する」ことが定められています。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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