個人建設業の貸借対照表の作り方

公開日:2015年09月09日 / 最終更新日:2018年04月01日

白色申告の個人事業主が貸借対照表を作るには

建設業許可を取得するためには、個人事業であっても、建設業法で定める様式の財務諸表(貸借対照表及び損益計算書)を作成する必要があります。


これらのうち「損益計算書」は、確定申告書添付の収支内訳書(白色申告)又は損益計算書(青色申告)を参考にご自分で作成することも可能でしょうが、「貸借対照表」の方は、白色申告の場合だと基になるものがほとんどありません。
このような白色申告の個人事業主の場合、果たして貸借対照表を作成することはできるのでしょうか。


結論から言いますと、暫定的なものにはなりますが、決算時(12月31日)の財政状態の各種データをかき集めることにより作成することができます。


具体的には、「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の各勘定科目に、次のように数値を入れて集計し、最後に微調整することにより完成させます。

以下の記事は、お手元に建設業様式の貸借対照表(様式18号)をご準備の上ご覧ください。


 資産の部


 【流動資産】

 ・現金預金

  事業用預金口座の期末(12月末)の残高を確認し、記入します。

 ・受取手形

  手形で工事代金を受け入れている場合の期末時点での期日未到来分の残高
  を記入します。

 ・完成工事未収入金

  期末までの工事は完成しているが、まだ入金していない工事代金の合計額
  を記入します。

 ・未成工事支出金

  工事の注文を受け、期末までに仕事を始めているが、まだ請求できないも
  のについて、既に支出している材料代や工賃等の合計額を記入します。

 ・材料貯蔵品

  工事に使う資材等をまとめ買いしている場合で、期末に在庫が残っていれ
  ば、その分の金額を記入します。

 *以上で「流動資産合計」に合計額を記入します。


 【固定資産】

 ・建物・構築物

  事業の用に供している建物・構築物があり、減価償却費の計算をしている
  場合は、当該年度の期末時点の未償却残高を記入します。

 ・機械・運搬具

  事業の用に供している建設機械、車両があり、減価償却の計算をしている場
  合は、当該年度の期末時点の未償却残高を記入します。

 ・工具器具・備品

  工具器具・備品で耐用年数が1年以上かつ取得価額が相当額のものがあり、
  減価償却の計算をしている場合は、当該年度の期末時点の未償却残高を記
  入します。

 ・土地

  事業用に供している土地の取得価額となります。

 *「固定資産合計」の金額を計上し、あわせて「資産合計」(流動資産合計
  +固定資産合計)の額を計上します。



 負債の部


 【流動負債】

 ・支払手形

  材料や工賃を手形を振り出して支払っている場合で、期末時点で決済期日
  が到来していないものの残高を記入します。

 ・工事未払金

  工事は完成しているのにまだ支払っていない材料費や外注費等について、
  期末時点の残高を記入します。

 ・短期借入金

  返済期間1年未満の借入金の残高を記入します。

 ・未払金

  工事以外の諸支払いで、期末現在支払っていないものの残高を記入します。

 ・未成工事受入金

  期末時点で引渡しを完了していない工事の請負代金の受入額の合計です。

 *以上で、「流動負債合計」を記入します。


 【固定負債】

 ・長期借入金

  返済期間1年超の借入金の残高を記入します。

 *「固定負債合計」を記入し、あわせて「負債合計」(流動負債合計+固定
  負債合計)を計上します。



 純資産の部

 ・期首資本金

  前期末の「純資産合計」の金額ですが、とりあえず空白にしておきます。

 ・事業主借勘定

  当該事業年度において、個人の預貯金等から事業のために充当した金額が
  あれば、その額を記入します。

 ・事業主貸勘定

  当該年度において、事業の資金から個人の生活費等に支出した金額です。

 ・事業主利益

  白色申告の場合は、確定申告書添付の収支内訳書の「専従者控除前の所得
  金額」になります。

 *末尾の「負債純資産合計」の金額を「資産合計」の金額と同額にし、簿記
  でいうところの貸借対象の状態にしておきます。

  また、負債純資産合計は負債合計と純資産合計の合計ですから、負債合計
  の金額を差し引いて「純資産合計」を計上しておいてください。


以上で、貸借対照表の数字がほぼ埋まりました。

最後に若干の調整をして、「純資産の部」の「期首資本金」を確定させることにより仕上げますが、期首資本金は「純資産合計」の数式により導き出します。


純資産合計=期首資本金+事業主借勘定-事業主貸勘定+事業主利益

つまり、純資産合計から事業主借勘定及び事業主利益を控除、事業主借勘定を加算し、「期首資本金」は算出されます。以上で貸借対照表の完成です。


ちなみに「次年度の期首資本金」は「前年度の純資産合計」の額なので、次年度の財務諸表を作成する際の最後の微調整は「期首資本金」ではなく、「事業主借勘定」又は「事業主貸勘定」で行うことになります。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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 〒810-0024 福岡市中央区桜坂3丁目12番92-208号

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