一括下請負の禁止について

公開日:2015年01月25日 / 最終更新日:2021年11月23日

建設業法では一括下請負が禁止されています!

一口に「一括下請負」といっても、元請が工事に一切関与しない本当の丸投げから、下請の現場担当者に元請のロゴや社名の入ったヘルメットやユニフォームを着用させ、名刺まで持たせるような、かなり手の込んだものまで様々あります。

 

しかし、建設業法では、「建設業者は、その請け負った工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならず、また建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った工事を一括して請け負ってはならない」ことが定められています。(建設業法第22条第1項、第2項)

一括下請負が禁止される理由

①発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切ることになる。(発注者は、建設業者の
 過去の施工実績、施工能力、社会的信用等様々な評価をした上で、当該建設業
 者を信頼して契約している)


②一括下請負を容認すると、施工責任があいまいになることで、手抜工事や労働
 条件の悪化につながるとともに、中間搾取を目的に施工能力のない商業ブロー
 カー的不良建設業者の輩出を招くことになりかねず、建設業の健全な発達を阻
 害するおそれがある。

一括下請負に該当する場合とは

一括下請負とは「丸投げ」とも言われ、工事を請け負った建設業者が、施工において実質的に関与を行わず、下請けにその工事の全部又は独立した一部を請け負わせることをいい、次のような場合が該当するとされています。


①請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わ
 せる場合


 <具体的事例>

 ・建築物の電気配線の改修工事で、電気工事のすべてを1社に下請負させ、
  電気配線の改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施
  工し、又は他の業者に下請負させる場合

 ・住宅の新築工事で、建具工事以外のすべての工事を1社に下請負させ、建
  具工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合


②請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮
 する工作物の工事を一括して他の業者に請け負わせる場合


 <具体的事例>

 ・戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸の工事を一社に下請
  負させる場合

 ・道路改修工事2キロメートルを請け負い、そのうちの500メートル分につ
  いて施工技術上分割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、
  その工事を1社に下請負させる場合


実質的に関与とは、元請人が、自ら総合的に企画、調整及び指導(施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するための工程管理及び安全管理、工事目的物、工事仮設物、工事使用材料等の品質管理、下請負人間の施工調整、下請負人に対する技術指導、監督等)の全ての面において主体的な役割を果たしていることをいいます。


また、下請負人が再下請負する場合についても、下請負人自らが再下請負した専門工種部分に関し、総合的に企画、調整、指導を行うことをいいます。

単に現場に技術者を置いているだけでは、これらに該当せず、また請負人との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれていない場合には「実質的に関与」しているとは言えないことになりますので、注意が必要です。

実質的な関与が認められるためには


 ●自社の技術者が下請工事の
  ①施工計画の作成 ②工程管理 ③出来形・品質管理 ④完成検査

  ⑤安全管理 ⑥下請業者への指導監督

  等について、 主体的な役割を現場で果たしていることが必要です。

 ●発注者から工事を直接請け負った者については、加えて

  ⑦発注者との協議 ⑧住民への説明 ⑨官公庁等への届出等

  ⑩近隣工事との調整

  等について、主体的な役割を果たすことが必要です。

 

一括下請負禁止の適用範囲

①一括下請負の禁止が適用される契約当事者の範囲には制限がありません。元請
 負人のみならず、一次以下の下請負人間の契約にも適用されます。


②公共工事については全面禁止です。(公共工事の入札及び契約の適正化の促進
 に関する法律第12条)


③民間工事は発注者の書面による承諾があれば可能ですが、民間工事であっても
 共同住宅の新築工事については禁止です。(建設業法第22条第3項)


④「親会社・子会社」の間の下請負であっても、別会社である以上、実質的関与
 がないと判断される場合には一括下請負に該当します。

一括下請負の禁止が適用されない場合とは

一括下請負は、公共工事では全面禁止されていますが、民間工事(共同住宅の新築工事を除く)については、元請負人があらかじめ発注者から、一括下請負することにつき「書面による承諾」を得ている場合は、禁止の例外とされています。


この場合の承認は、建設工事の最初の注文者である発注者の承諾が必要で、下請負人がさらに一括して再下請に出そうとする場合にも「発注者」の書面による承諾が必要です。当該下請負人に発注した元請負人の承諾ではありません。


なお、あらかじめ発注者の書面による承諾を得て一括下請した場合においても、一括下請負の禁止が解除されるだけであり、元請負人としての責任は、建設業法その他の規定に定められたことと変わることはありません。

一括下請負に対する監督処分等

違反した建設業者に対しては、行為の態様、情状等を勘案し、再発防止を図る観点から、建設業法に基づく監督処分(営業停止処分)が行われます。


また、一括下請負と判断された工事についてはその工事を実質的に施工していると認められないため、経営事項審査における完成工事高から当該工事に係る金額を除外することとされています。


 コンテンツ監修者プロフィール


 高松 隆史(たかまつ たかし)

 昭和35年10月9日生まれ。行政書士。

 行政書士高松事務所・建設業許可申請サポート福岡代表。


 地場老舗ゼネコンの社長室長、常務取締役を経て、平成22年5月行政書士登
 録。福岡市を中心に福岡県内全域で年間100件以上の依頼・相談を受ける。

 建設業の産業特性や業界事情、商慣習等を自らの肌で知る「元建設業経営者
 の行政書士」として、建設業許可の取得支援業務を最も得意とする。

 建設業者が抱える経営法務の諸問題に対し、建設業実務に即した実戦的なア
 ドバイスができる建設業法の専門家として定評がある。


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